イタリア南東部プーリア地方に、「パンの街」と呼ばれる街があります。
アルタムーラという名のその町は高い城壁に囲まれた街という意味があります。
実際に中心地はいくつかの入り口がありそこを封鎖すると侵入できないようになっていました。
街の入り口には、パンの街へようこそ!と書かれた看板があります。人
口約7万人の小さな街に200軒以上のパン屋があります。
薪で焼く1400年代のパン屋が未だに営業しているのを見るとその歴史の深さに驚かされます。
そのパンの街に某有名ファーストフード店ができて話題になったことがあります。
南イタリアにそもそも少ないハンバーガー店が、パンで有名な街に突然オープン
しましたが、街の住民は店内に入るも注文もせずに座ってお話しています。
冷房がまだ珍しいですから涼みに来ていたり。当然自分たちの街のパニーニやフォ
カッチャが一番な訳ですから。1年が過ぎた頃、有名ハンバーガー店でも類を
見ない撤退となり閉店しました。さすがパンの街!!
街のマンマ達は午前中から青空市場で新鮮な野菜を買い、肉屋、チーズ屋、パン屋に寄り、
それはそれは真心込めて昼食を作ります。子供達やお父さんはそのお昼ご飯を楽しみに一度家へ戻ります。自家製ワイ
ンがペットボトルに入れられテーブルに置かれます。
そのようなテーブルの一時は生活に豊かさを与えます。1年を通してホールトマ
トやオリーブオイル、ワインなどを自家製で親族総出で作るのを共 に経験させ
てもらえたのは大きな財産となっています。
私が修行したレ・バゲッテ(le baguette)の話
家族のように親切にして頂いたパン職人アンジェロと奥さんのファウスタは今回
東京で私がフォカッチャ専門店を開くことに全面的に協力してくれました。技
術的なこと、使用する粉のこと、お店のロゴなど細かい事まで惜しみなく協力して
いただきました。心から感謝しています。
マエストロのお店は広い工房とイートインを含む大変センスの良いお店です。伝
統的なアルタムーラのパンやフォカッチャからビスコッティやドルチェなど
様々なアルタムーラならではの美味しいものが楽しめます。彼らは伝統を重んじ
ながらも常に新しい取り組みや試みをしている前向きな職人です。
私も彼から教わった伝統あるパンを忠実に作る努力をしています。塩の量以外は
何も変えていません。ぜひアルタムーラならではの素朴ながらも香り豊かな
イタリアパンを広めていけたらと思っております。